「おおきなピンでおえかき」セット
Maxi insert mosaic box with cards and pegs
エピソード
エピソード1「ぶどうもあるのよ」(1歳児クラス 女児)
1歳児クラスのHちゃんは、ボードに差し込んだ、下のカードの色に合わせて同じ色のピンを合わせてパズルのように遊んでいた。保育者は、色の識別にもつながるので、乳幼児の発達にとっても有効な玩具であると話す。また、赤いピンを出し、「あかはりんごなの」「ぶどうもあるのよ」と果物に見立てて遊ぶ姿も見られた。
他の子どもは、ピンがたくさん入っている巾着を振り、その音を楽しんだり、「この中にはお芋が入っているよ」とイメージを膨らませたりしながら楽しんでいた。
エピソード2「透明なところも埋めたいから白いピンを使っているの」(3・4・5歳児グループ)
「『おおきなピンでおえかき』セット」のコーナーでは、3歳児1人、4歳児3人、5歳児1人の計5人で遊んでいた。課題カードを用い、お互いに協力試合、自由にピンをはめ始め、「ほら見て!ちょうちょうだよ」と形づくりを楽しんでいた。その後、お絵描き遊びを終えると、「これはね、全部色のピンで埋めるんだよ。透明なところも埋めたいから、僕たちは白いピンを使ってるの」「でも白が足りなくなっちゃうから、白がもっとあったらいいのに」と述べ、透明に近い色をイメージし、白を透明に見立てて遊びが進められていた。透明なピンか、代用できる差せるものを用意してもいいのかもしれないと感じたが、自分たちで工夫しながら遊びを考案していくことも「思考力をはぐくむ」ことにつながっていくので、子どもたちと対話する時間を用意することも一案となる。
他方、5歳児クラスのQ君は、数学的な遊びは苦手で、色を分けたり配置を楽しんだりする遊びを積極的に行っている。そのため、ラーニングマテリアルの中では、特に「『おおきなピンでおえかき』セット」を好んで遊ぶことが多い。この日も、Q君は、「翼がとんがっているから、飛行機の形だよ」「お家ができた!」などと先生に伝えながら「『おおきなピンでおえかき』セット」で遊んでいた。
エピソード3広がるオリジナルカードのアイディア(1歳クラス 男児)
未満児のクラスでは、1歳児クラスの男児二人が「『おおきなピンでおえかき』セット」で遊んでいた。まだ手の力が幼児ほど発達していないため、ピンを穴に入れる作業が難しそうな姿が何度が見られた。保育者が一緒に手を添えて穴に入れることができると、言葉にはならないが笑顔で達成感を伝えてくる。一つはめられると、もっとやりたいと違うピンを差し出し、「もう一つできるんだよ」と先生にノンバーバル・コミュニケーションで伝えてくる。そのうち、ボードがいっぱいになると保育者は「少し減らそうね」と作業しやすい環境への手助けをしていた。
別の男児がふざけてピンを床に向かって投げてしまう場面も見られた。「入れるところ、違うよね。自分で拾っておいでね」と自らの行動に責任を持ち、拾ってくるように促していた。本人が拾うと「拾えたね。ここに入れようか」と箱の中に片付けるよう、声がけをしていた。このように、活動の中では、ピンを投げてしまう子どももいたが、「なくなっちゃったら遊べなくなっちゃうね」と言い、1歳児でも自分で拾わせ、してはいけないことに自ら気づいてもらえるような働きかけをしていた。
エピソード4普段の生活の興味関心が遊びの中で表現される(3歳児、4歳児グループ)
「『おおきなピンでおえかき』セット」では、男児2名(3歳児1名・4歳児クラス2名)と女児2名(3歳児クラス)の4人が一緒に遊んでいた。この日は、課題カードを入れず、思い思いの図柄を提案し、ピンを用いて絵を描き表現していた。4人は、「次は何を作ろうか」「トラックがいいね」「お花がいいよ」と言葉を掛け合い、一緒にピンを差していく。先生が、完成した作品を指差し、「何が完成したか教えてくれる?」というと、「オオイヌノフグリだよ、上が雲とお空なの」と答える。A園は、環境教育に力を入れていることから、普段から身近な花や自然に触れていることがわかり、今回のラーニングマテリアルの遊びにも反映されていた。保育者からは、「表現力が身についてきています。このように、普段の生活の興味関心が、遊びの中で表現されるのはすごいなと保育者側も感じます。課題プレートに頼るだけでなく、自分たちでお絵描きをした画用紙をフレームに差し込んで、描かれた色をピンで差していくというのもいいかなと考えていました。子どもたちにも提案してみます」との声が上がった。
子どもたちは個々に春の訪れを感じ、ラーニングマテリアルを用いて季節を表現していたのだった。「みんなでピンの作品を作って展覧会がしたい」との意見も子どもたちからは出されていた。
エピソード5「気になる子」も集中して取り組むマテリアル(2歳男児)
1歳児クラスのKくん(現在2歳)は多動気味な子どもで、普段の生活でもテーブルの上に乗ったり、静かにしなければならない場面でも走り回ったり、保育室から出て行ってしまったりすることがあるという。そのため、保育士も気にかけている子どもの一人だと述べていた。保護者からも「落ち着きがなく、家庭でも少し困る場面があります」とKくんの育児をする上での悩みが保育者に打ち明けられていた。
しかしまだ年齢が2歳児ということもあり、言葉の発達とともに自分の気持ちが表現できるようになることもあることから当面は、保育者と家庭で見守っていくという方針が共有されている。Kくんは、特に「形や色」の遊びが好きであり、この日は「『おおきなピンでおえかき』セット」に集中して取り組んでいた。先生が「これは何色かな?」と尋ねると「きいろ」「しろ」「みどり」と適切な単語で返すことができた。